Launch・Google公式ブログより

「4秒・1枚3.4セント」のNano Banana 2 Lite登場——Googleが画像と動画で仕掛ける「速さと安さ」の勝負

動画生成のGemini Omni Flashも1秒0.10ドルで開発者に開放。ただし速度・価格・品質の数字はすべてGoogleの自己申告で、「10秒まで」「動画参照は未対応」といった弱点は同社自身が正直に開示している
5行で要点
  • 画像は1枚$0.034・約4秒、動画は1秒$0.10——Googleが2026年6月30日に発表した新モデル2つの売り文句です(数字はすべて自己申告)
  • 画像のNano Banana 2 Liteは、初代Nano Bananaの実質的な後継としてファミリーの「一番速くて一番安い」枠を担うモデルです(位置づけは事実)
  • 動画のGemini Omni Flashは会話形式の動画編集が売りで公開プレビュー入り。「Veo 3.1 Fastと同額」はGoogle自身による比較で、品質が同等かの根拠はありません
  • 動画は最長10秒、動画参照は受け付けても正しく処理されない、シーン切替でキャラクターが崩れる——弱点はGoogle自身が開示した事実です
  • 本命は「Liteで画像を安く作り、Omni Flashで動かす」2段パイプライン。多段編集は1セッション最大3回まで(ベンダー説明)
1 何が起きたか

6月30日、Googleが「作る道具」を2つ同時に出した

画像1枚3.4セント、生成は約4秒——ただし、この数字を測ったのは売り手であるGoogle自身です。Google DeepMindは2026年6月30日、公式ブログで2つの生成メディアモデルを発表しました。1つは画像生成のNano Banana 2 Lite(モデルID: gemini-3.1-flash-lite-image)。もう1つは動画生成・編集のGemini Omni Flash(gemini-omni-flash-preview)で、こちらは2026年5月のGoogle I/Oで初披露されたものが、いよいよ開発者向けの公開プレビュー(誰でも試せるが、まだ完成版ではなく、機能や価格が変わりうる段階)としてGemini APIとGoogle AI Studioに載りました。

Nano Banana 2 Liteの位置づけははっきりしています。Nano Bananaファミリーはこれで4段構成になりました。速さ重視の「2 Lite」、バランス型の「2」、品質と推論力重視の「Pro」、そして旧世代の2.5 Flash Image——最後のものについてGoogleは移行を推奨しています。つまりLiteは、初代Nano Bananaの実質的な後継として「一番速くて一番安い」枠を担うモデルです。

ここで1つ、読み方の注意があります。発表文には「Liteは本日からAI Modeでの検索、Geminiアプリ、NotebookLM、Googleフォトなどの一般向け製品にも順次展開」とありますが、「順次展開(rolling out)」は全ユーザーが今日使えるという意味ではありません。展開の時期も範囲も、この発表文からは確認できません。

POINT
この記事の読み方:今回の発表は数字がたくさん出てきますが、第三者が測った性能値は1つもありません。速度も価格も品質もGoogleの自己申告です。一方でGoogleは、モデルの弱点をかなり具体的に自分から開示しています。以下では「Googleがそう言っている(主張)」と「Google自身が認めた制限(事実)」を分けて見ていきます。
2 Nano Banana 2 Lite

4秒・$0.034——問われるのは「安いか」ではなく「十分良いか」

Liteの数字を先に並べます。テキストからの画像生成が約4秒、1K解像度の画像1枚あたり$0.034。繰り返しますが、レイテンシー(プロンプトを送ってから結果が返るまでの待ち時間)の4秒はGoogleが発表文で述べた値で、第三者の測定はありません。価格はGoogleの公開料金ページと突き合わせて確認できる性質のものですが、この発表文の中だけでは検証されていません。

4秒
テキストから画像生成までの所要時間(Google自己申告)
$0.034
1K解像度の画像1枚の生成価格(ベンダー公表値)
4段構成
Nano Bananaファミリーの現在のティア数。Lite/2/Pro+旧モデル(事実)

Googleは「速さを優先しても、プロンプトへの忠実さ、キャラクターの一貫性、画像内の文字の読みやすさは保っている」と説明します。発表にはElo(チェス由来の、一対一比較でどちらの出力が好まれたかを順位づけする点数)で競合と比べたベンチマークチャートも載っています。ところが本文には、肝心のEloの数値も競合モデルの名前も書かれていません。「チャートがある」ことと「差が確認できる」ことは別です。品質維持の主張は、現時点では主張のままです。

平たく言うと

1枚3.4セントという価格は、「作品を1枚仕上げる」ためではなく「チラシを何千枚も刷る」ための値段です。数枚のデモ画像なら価格差はほぼ誤差ですが、広告バナーやECの商品画像、SNS素材を1日に数千枚生成して作り分けるような現場では、1枚あたりの単価と待ち時間がそのまま事業のコスト構造になります。Googleが狙っているのは明らかにこの「印刷所」的な用途で、だからこそ品質のティア(Pro)と速さのティア(Lite)を分けて売る構成にしたわけです。

ここまでは画像の話です。もう1つの動画モデルには、Google自身が並べた「できないことリスト」が待っています。

3 Gemini Omni Flash

会話で動画を編集——ただし制限リストはGoogle自身が一番詳しい

もう1つの主役Omni Flashは、テキストで指示するだけで動画を生成し、さらに「もう少し明るく」「この人物を右に」と対話しながら編集できる(会話形式の動画編集)ことが売りのモデルです。テキスト・画像・動画を混ぜて参照として渡し、登場人物や場面の一貫性を保つマルチモーダル参照にも対応する、とGoogleは説明しています。

価格は動画の出力1秒あたり$0.10。Googleはこれを「Veo 3.1 Fastと同額」と強調しますが、この比較はGoogle自身によるもので、しかも「同じ値段」が言えても「同じ品質」の根拠は発表文のどこにもありません。値段の横並びは、品質の横並びを意味しないことに注意が必要です。

一方で評価すべき点もあります。Googleは発表の中で、現時点の制限をかなり率直に列挙しています。これらは誇張の余地がない、開示された事実です。

制限内容性質
動画の長さ最長10秒まで。それ以上は「近日対応予定」(=まだ無い機能)開示された事実
動画リファレンスAPIのスキーマは3秒までの参照動画を受け付けるが、モデルはまだ正しく処理できない開示された事実
音声リファレンスAPIからのアップロード不可。シーン延長機能もAPIでは未対応開示された事実
キャラクター一貫性シーンの切り替えやカメラのパンで人物の見た目が崩れることがある開示された事実
多段編集Interactions APIで1セッション最大3回まで編集を重ねられるベンダー説明
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「公開プレビュー」というラベルも軽く見ないほうがいいでしょう。正式版ではないので、モデルの挙動も価格も今後変わる可能性があり、利用できる地域にも制限があります(詳細はドキュメント送りになっています)。デモ動画の完成度と、開発者が手元で得られる結果には、この制限リストのぶんだけ差が出ると考えておくのが現実的です。

4 本当の狙い

「Liteで作って、Omniで動かす」——Googleが敷きたい2段パイプライン

2つのモデルを同日に出したのは偶然ではありません。Googleが発表で明確に推しているのは、Liteで画像を安く速く作り、その画像を参照としてOmni Flashに渡して動画化する、という連鎖ワークフローです。

テキストプロンプト Nano Banana 2 Lite 画像1枚 約4秒 / $0.034(自己申告) 画像を参照として渡す Gemini Omni Flash 動画 $0.10/秒(自己申告) 最長10秒の動画(上限は開示された事実) 会話形式の編集は最大3回まで重ねられる(ベンダー説明) 第1段:大量・高速・低単価の画像生成 第2段:その画像を起点に動画化・対話編集
Googleが発表で提示する画像→動画の連鎖ワークフロー。数字はいずれもGoogleの公表値で、動画の10秒上限のみ同社が制限として明示した確定事項。

このパイプラインの意味は、単発の「1コマンドで動画」ツールとの違いにあります。画像で構図やキャラクターを固めてから動画化し、さらに言葉で編集を重ねる——つまり複数のモデルを工程として繋ぐ作り方を、GoogleはAPIレベルで標準の開発者体験にしようとしています。動画の1秒単価がずっと普及の壁だったこの分野で、$0.10/秒という(自称Veo 3.1 Fast並みの)値付けを持ち込んだことも、価格競争を確実に一段加速させます。

なお、生成された画像・動画にはどちらもSynthID(AI生成物だと後から検出できるように埋め込まれる、目に見えない電子透かし)が入る、とGoogleは説明しています。Geminiアプリ、Chrome、検索から確認できるとのことですが、これも同社の説明ベースの話です。

5 どう受け止めるか

「安い」は確かめられる、「良い」はまだ確かめられない

最後に時間軸を整理して、この発表の確度をまとめます。

2026年5月(Google I/O)
Gemini Omni Flashが初披露される(事実)
2026-06-30
Nano Banana 2 LiteがAI Studio・Gemini API・Enterprise Agent Platformで提供開始。Omni Flashが開発者向け公開プレビュー入り。Liteの一般向け製品への「順次展開」も同日開始と発表(発表自体は事実、展開の完了度は未確認)
時期未定「近日」
Omni Flashの10秒超の動画対応——計画であって、まだ存在しない機能
結論

今回の発表で確実に言えるのは、Googleが画像と動画の両方で「速くて安い」ティアを開発者に開いたこと、そしてその弱点を珍しいほど具体的に自己開示していることです。4秒・$0.034・$0.10/秒という数字はすべて自己申告で、品質を裏づけるEloの実数は本文に1つもありません。「安さ」は料金表でいずれ確かめられますが、「安くても十分良い」かどうかは、第三者の測定と開発者の実利用が出てくるまで保留です。この発表の正確な現在地は、「Googleは安さを出した。市場はまだ品質を測っていない」です。

出典:Google公式ブログ(Gemini Modelsセクション)のNano Banana 2 Lite / Gemini Omni Flash発表(2026年6月30日、著者はプロダクトマネージャーのAlisa Fortin、Anish Nangia)。レイテンシー・価格・品質維持・Veo 3.1 Fast同等の各数値はGoogleの自己申告であり、第三者による測定は本文に含まれません。10秒上限などの制限事項はGoogle自身が発表内で開示したものです。