画像1枚0.034ドル、動画は1秒0.10ドル。GoogleがNano Banana 2 LiteとGemini Omni Flashを開発者に開放——バグのリストまで自分で添えて
- 画像は1枚$0.034(1K解像度)、動画は1秒$0.10。公式料金表で確認できる事実です——1ドルで画像が約29枚、10秒動画がちょうど1本
- 「Gemini史上最速・最安」「4秒で生成」はGoogleの自己申告。根拠は測定方法非公開の自社チャート(Eloスコア)だけです
- 公開は2026年6月30日、Gemini APIとGoogle AI Studio経由。Google I/Oで披露済みのOmni Flashも、開発者が触れるのは今回が初です(公開プレビュー)
- 「3秒までの動画リファレンスはスキーマを通るのにモデルが正しく処理しない」——Google自身が初日から明記したバグです。ほかに動画は最長10秒、音声リファレンス非対応
- 本題は2モデルの連結:安い画像を下絵にして動画モデルへ渡し、言葉で編集を最大3回重ねる(この「3回」は実演のない主張)
6月30日、Googleが生成メディアの「速い方」を2つ同時に出した
1ドルで画像が約29枚、10秒の動画がちょうど1本——Googleが2026年6月30日に開発者へ開放した2つの生成メディアモデルの料金です。1つは画像生成のNano Banana 2 Lite。初代Nano Bananaの後継として、速度とコストに割り切った位置づけです。もう1つは動画の生成と編集を行うGemini Omni Flash。今年のGoogle I/Oでお披露目されていたモデルが、初めてGemini APIとGoogle AI Studio、そしてGemini Enterprise Agent Platformから使えるようになりました。
まず外から確認できる事実を押さえます。両モデルには具体的なAPIモデルIDが割り当てられており、誰でもGemini APIで実在を確かめられます。
gemini-3.1-flash-lite-image (Nano Banana 2 Lite) gemini-omni-flash-preview (Gemini Omni Flash)
後者のIDに「preview」の文字が入っている点が、このモデルの現在地を正直に物語っています。公開プレビューとは「誰でも試せるが、未完成。制限もバグも価格も今後変わり得る」という意味であり、一般提供(GA)とは区別される段階です。
発表元はGoogle DeepMindで、公式ブログにプロダクトマネージャーのAlisa Fortin氏とAnish Nangia氏の連名で掲載されました。つまりこれは宣伝を兼ねたlaunch記事です。性能を競合と比べたチャート(Eloスコア——チェス由来の順位付けで、人が2つの出力を見比べて勝敗を判定し、勝つほどスコアが上がる仕組み)はGoogleの自社作成で、測定方法も日付も比較相手の条件も本文には示されていません。
確認できるのは「値段」、確認できないのは「速さ」
外から検証できる数字は価格です。Nano Banana 2 Liteの画像生成は1K解像度1枚あたり0.034ドル、Omni Flashの動画は出力1秒あたり0.10ドル。どちらも公開された料金であり、Gemini APIの料金ページと突き合わせられます。動画の1秒0.10ドルは既存のVeo 3.1 Fastと同じ水準だと、発表文自身が述べています。
この水準になると、生成画像はもはや「1回試すのに身構える機能」ではなく、大量に作って大半を捨てる前提の、部品の値段に入ってきました。
一方、「テキストから約4秒で画像が返る」というレイテンシ(リクエストを送ってから結果が戻るまでの待ち時間)はGoogleの自己申告で、測定条件は書かれていません。「速度を優先しても、プロンプトへの忠実さ・キャラクターの一貫性・画像内の文字の読みやすさは保っている」という品質面の売り文句も同様に、現時点で第三者の検証はありません。
ただし、この安さより先に知っておくべきことがあります。Google自身が初日から明記した「できないことリスト」です(第4節で読みます)。
安い画像で下絵、動画モデルで本番——「つないで使う」が今回の本題
今回の発表で最も示唆的なのは、2つのモデルを連結して使うことをGoogle自身が推奨している点です。速くて安い画像モデルで下絵を量産し、気に入った1枚を参照画像としてOmni Flashに渡して動かす。さらに同じセッションの中で「もっと明るく」「カメラを引いて」と、対話編集(編集ソフトを操作する代わりに、変更内容を言葉で指示するやり方)で仕上げていく流れです。
編集の重ね掛けはInteractions API経由で1セッションあたり最大3回までとされています。ただしこの「3回」は発表文の中で実演されておらず、仕様として書かれているだけの主張です。Googleは連結の実例として3本のデモアプリ(Anywhere、Space Lift、Omni product studio)を公開しています。
アニメ制作の分業に似ています。Nano Banana 2 Liteは絵コンテ担当——速くて安いので、何案でも描き直させられます。Omni Flashは動画担当——コストが高いので、選び抜いた1枚だけを渡して動かします。今回Googleがやったのは、この2人をひとつのAPIの中で隣の席に座らせたことです。ただし動画担当はまだ研修中(プレビュー)で、10秒までしか描けず、苦手な作画もあると本人が申告しています。
Google自身が書いた「できないことリスト」を読む
launch記事としては珍しく、発表文はOmni Flashの弱点を自分で列挙しています。宣伝文句よりも、こちらの方がモデルの現在地を正確に教えてくれます。
| 項目 | 内容 | 性質 |
|---|---|---|
| 動画の長さ | 最長10秒。それ以上は「近日対応」の約束のみ | 公式に明記された制限(事実) |
| 動画リファレンス | 3秒までのクリップはAPIのスキーマ検証を通るのに、モデルが正しく処理しない | 発表文自身が開示したバグ |
| 音声リファレンス/シーン延長 | Gemini APIでは非対応 | 公式に明記された制限 |
| キャラクターの一貫性 | シーン転換やパン(カメラを横に振る動き)で人物の見た目が崩れることがある | Google自身が認める弱点 |
| プレビュー版 | モデルIDに「preview」を含む公開プレビュー。挙動も価格も変わり得る | 位置づけ上の注意 |
特に注目すべきは2行目です。動画リファレンスは、リクエストの形式チェック(スキーマ)は通るのに、モデル側で正しく扱われない——つまりエラーも出さずに黙って期待を裏切るタイプの不具合を、Googleはリリース初日から自分で開示しています。ドキュメントに書かれていない落とし穴に開発者がはまるよりずっと親切ですが、裏を返せば「その完成度のまま外に出す」という判断でもあります。公開プレビューという肩書きは飾りではありません。
Omni Flashは「動画版Geminiの完成品」ではなく、10秒上限・既知バグあり・一貫性に弱点ありの公開プレビューです。それでも$0.10/秒という価格とAPIモデルIDは実在し、今日から誰でも試せます。未完成のまま早く開けて、制限は正直に書く——このやり方自体がGoogleの競争上の選択です。
開発者の先に、一般ユーザーまで一直線
最後に時間軸と、この発表が持つ意味を整理します。
開発者向けAPIと同時に、GoogleはNano Banana 2 Liteを消費者向け製品群——検索のAIモード、Geminiアプリ、NotebookLM、Googleフォト、Stitch、Google Flow、Google広告——へも「順次展開する」と述べています。展開の範囲と時期はGoogleの発表ベースの話ですが、言葉どおりなら、このモデルの出力は開発者だけでなく一般ユーザーの目にも直ちに届くことになります。生成物にはSynthID(AI製であることを後から検出できる不可視の電子透かし)が埋め込まれ、GeminiアプリやChrome、検索で確認できる——これもGoogleの説明です。
意味を一段引いて見ると、画像1枚3セント台という水準は、生成画像を「都度確認して使う特別な機能」から「大量に呼んで捨てる普通の部品」へ押し出します。動画も1秒単位の従量課金と対話編集によって、テキストや画像と同じチャット式のワークフローに寄ってきました。そして「安い画像モデルを動画モデルにつなぐ」というパターンは、研究所ではなく普通のアプリ開発者がマルチモーダル(テキスト・画像・動画を1つのリクエストで組み合わせて扱うこと)の流れ作業を組む時代の、具体的な設計図になっています。
今回の発表で確認できる事実は「価格」と「制限」、まだ主張の段階なのは「速さ」と「品質」です。$0.034の画像と$0.10/秒の動画が本当に宣伝どおりの品質なら、生成メディアのコスト構造は一段下がります。つまりこのニュースは「すごいモデルが出た」ではなく、「安さは事実、速さは主張、制限は公開済み——その全部を誰でも自分で検証できるようになった」という話です。モデルID「gemini-3.1-flash-lite-image」をGoogle AI Studioに貼れば、この記事の数字は今日から自分で確かめられます。